小林敏明教授のライプツィヒの街から 85 東側から見たドイツの選挙

こんばんわ!モンです

 

ドイツの小林教授から

日本でもニュースで話題になっていた

ドイツの出直し選挙についてのレポートが届きました

 

教授本日もよろしくお願いいたします

 

 

 社民党SPD、緑の党Die Grünen、自由民主党FDPの連合政権からFDPが離脱して、急遽再選挙となったドイツですが、その出直し選挙が2月23日に行われました。結果は図表のとおりです(24日朝の時点)。

 

 

はっきりと目立つのはAfDという極右を擁した政党が飛躍的に伸びたことです。とくに僕の住む旧東独地区では軒並み40%を超える得票率で圧勝、西側でも20%近い票を獲得しました。この政党はドイツ統一後なかなか解消しない東西格差に不満を抱き続ける東独の人たちによって起こったものですが、これにネオナチなどの極右が乗って精力的に運動を展開しています。

 

この政党の主張の中心は移民難民の排斥ですが、選挙の直前にイラクやアフガニスタンの難民による無差別テロが相次いだため、選挙ではかなり優利に立ちました。奇妙なことに、前回の選挙のときも直前に難民のテロが起こっています。こんなテロをすれば、自分たちに対する規制がますます厳しくなるのは目に見えているのに、どうしてこんなことをやったのか、僕にはきわめて不可解です。加えてX(旧Twitter)を通してアメリカのマスク(ひいてはトランプ)が精力的にAfDの支援活動を展開したことも大きな効果を発揮しました。このあたり、なんだか「裏」があるような気がしてなりません。

 

東独地区では長引くウクライナ戦争に対して厭戦感が広まっています。東側では西側と比べると、かつての盟友ロシアに対する反感はそれほど強くありません。それはAfDや左翼党Die Linkeから分離したヴァーゲンクネヒト党BSWがナショナリズム(ドイツ中心主義)の色を表に出し、どちらかというとロシア寄りの終戦を訴えていたことにも表れています。

 

こうした事情に加えて折からの長年の生活苦があるので、多くの人たちがこれまで政権を担ってきたSPDDie GrünenFDPに対する不満を露わにしたのが今回の結果につながりました。東独地区の人たちにとってはこれらの政党はどれも「西側の政党」なのです。とくに大敗北を被ったのはSPDFDPでした。SPDは戦後西ドイツの二大政党の一翼を担う老舗で、統一直後は東側でも中心政党だったのですが、この30年間にその信頼を急速に失い、現在では得票率は一桁にまで落ちてしまいました。つまり旧東独左翼陣営の受け入れに失敗したわけです。この間政権与党にいてしょっちゅう足を引っ張り続けて評判の悪かったFDPは経済合理主義のシンボルとして東独の人たちには初めから「典型的な資本主義の権化」とみられていて、今回の失墜は初めから予想されていました。

 

Die Grünenが伸びなかったのは、まずエネルギー問題です。ウクライナ戦争で天然ガスをはじめとするエネルギー資源の枯渇問題が顕在化しました。それでも環境保護を中心課題とする政党として原発や褐炭採掘を復活させたりするわけにはいきません。そして光熱費の高騰となったわけですが、これがDie Grünenに対する結構強い反発を結果したと思われます。

 

失望した東独の人たちは一時期再び旧東独共産党の流れを引くDie Linkeに期待したのですが、それが現実政治ではなかなか目立った業績を上げられないでいる間に、東の人々は次第に既成政党全般に対する不満を募らせ、ついには半ばやけくそで新興のAfDに投票しているというのが、僕の見立てです。彼らは、この政党の中にネオナチがいようがいまいが、そんなことはどっちでもよいから、もっと東地区に目を向けろというメッセージを発しているように思えます。

 

そういう状況の中にウクライナや中東からの難民が入ってくると、われわれでもこんなに苦労しているのに、どうして難民の世話までしなくてはならないのだという不満が出てきます。移民難民排斥が生活苦に置かれている中下層に広がっているという事実は無視できないでしょう。この点で日ごろ多民族多文化の共生を訴えているDie Grünenにとって状況は不利に働いたと言えます。これがDie Grünenが頭打ちを食らった二つ目の理由です。

 

今回の選挙で第一党となったCDUCSUの党首メルツはさっそく連立政権のためのパートナー探しに移りますが、僕の予想では今回大敗北を被ったSPDに呼びかけて、難民規制を条件に、早々に中道政権を形成することになるでしょう。

 

 

僕はといえば、どんな状況になろうが、あのフクシマの悲惨を忘却から救うため、この春もベルリンに出かけるつもりです。

 

 

教授有難うござました

東西格差、ウクライナ戦争、移民難民、エネルギー問題、

ドイツ一筋縄ではいかぬ課題が山積ですね

かつてのEUの優等生が・・・

 

教授、ベルリン風車デモ頑張ってください