小林敏明教授の「ライプツィヒの街から 83 灰色の狼」

こんばんわ!モンです

 

早いものでまたこの季節がやってきました

ドイツの小林教授といえば・・・サッカー

先日までドイツで開催されていた

ヨーロッパ選手権 

教授は今回の大会をどう読み取ったでしょうか???

 

それでは本日もよろしくお願いいたします

 

 

 

83 灰色の狼

 

 6月から7月にかけてドイツ主要都市を会場にサッカーのヨーロッパ選手権が開かれました。わがライプツィヒも何試合かを担当し、試合当日は朝から駅の周りに各国のTシャツを着たファンがウロチョロ、試合後は勝った側も負けた側も酔っぱらって奇声を上げてました。

 

駅の近くに住む身にはいささか迷惑でしたが、まあ、このぐらいは仕方ありません。自分も、昔ナデシコ・ジャパンがワールドカップで優勝したとき、クナイペ(飲み屋)でへべれけになって家まで担がれたことがありますからね、他人のことは言えません。

 結果は僕の「推し」だったスペインの優勝となりましたが、今回は実力伯仲で、どこが優勝してもおかしくない内容でした。

 

8強はドイツ、スペイン、イングランド、スイス、ポルトガル、フランス、オランダ、トルコ、このうち4強に残ったのははスペイン、フランス、イングランド、オランダでしたが、内容的には負け組のドイツ、スイス、ポルトガル、トルコとごっそり入れ替わる可能性もありました。決勝トーナメント一回戦で敗退したイタリア、ベルギー、デンマーク、オーストリアなどもこれらにそれほど劣ってはいませんでした。

 

ヨーロッパ・サッカーはまさに群雄割拠の時代です。

 

今大会はどの国も新旧交代の過渡期にあって、これからを担う20歳前後の若手台頭組と30過ぎのベテラン組の組み合わせがあちこちでみられました。ドイツの例でいえば、ドイツチームの象徴とも言うべきゴールキーパーのノイアー(38)、今期でリタイアーするクロース(34)をバックにムジアラ、ヴィルツの21歳コンビがトップで活躍。とくにムジアラはこの先10年ぐらいドイツのナショナルチームを牽引していく存在になるでしょう。

 

サッカー王国スペインでは、エースのモラタ(31)を中心に、ヤマルとウィリアムス(21)のオフェンスを組みましたが、ヤマルはなんと16歳(大会中に17歳)!ドイツでの夜間のゲーム参加は労働基準法に抵触するのではないかという話も出たほどの若さです。まさに将来のスーパースター候補です。

 

フランスの主役は明らかにジルー(37)、グリースマン(33)からムバッペ(25)に移っていますし、これまで世界のスーパースター、ロナウド(39)とペペ(41)に率いられてきたポルトガルも、今大会を最後に大きな世代交代を迎えることになるでしょう。

 

そういう意味では世代交代をほぼ完了しているのがイングランドです。エースのケイン(30)を除けば、中心はサカ(22)、ベーリンガム(21)など20代前半に移りつつあり、このメンバーが安定すれば、ここしばらくは毎回優勝候補に挙げられるでしょう。

 

この新旧交代に並行して目立つのは、いつも言っていることですが、移民難民系の選手の活躍です。

 

フランスのスター選手ムバッペの両親はカメルーンとアルジェリアだし、ドイツの新星ムジアラと鉄壁のディフェンダー・リューディガーの母親は、それぞれナイジェリアとシエラレオネです。

 

準決勝まで勝ち上がったオランダはファン・ダイクをはじめ有力選手が南米スリナムの血筋を持っています。ベルギー、イタリアも多かれ少なかれ同じような状況です。要するに強豪国のハイブリッド化は当たり前になってきているのです。

 

逆に言えば、強豪でありたければもはやハイブリッド化は避けられないということです。

 

しかし、この間ヨーロッパ全土では、こういうトレンドに逆行するような事態が進行しています。いわゆる移民難民排斥運動です。資本のグローバル化とともに産業構造が大きく変化するにつれて格差が広がり、それに加えてウクライナ戦争の重圧がかかってくると、その中で不遇を強いられた人々に鬱憤がたまってきます。

 

ドイツで言えば、僕の住む旧東独地区の人たちがそうです。この鬱憤のはけ口となっているのが移民難民への敵意です。低賃金で不遇な状況に置かれていると感じている人たちには、彼らが入ってきたからわれわれは仕事を失ったとか(実際はそうではありません。低賃金の3Kの仕事に就くドイツ人が減って、それが移民や難民の人たちに回っているだけです。これはどの国でも同じでしょう)、難民は働きもしないのにただで金をもらっている(ウクライナ難民)というような言い分がもっともらしく聞こえてしまいます。

 

こうした状況はドイツに限らずフランスやイタリアのみならず東欧(ハンガリー、ポーランド、スロバキア)などでも見られ、移民難民排除を訴える極右政党が急激に伸びました。ヨーロッパのサッカー界はまさにそういう動きへの歯止めの役割を果たしているのです。

 

だからヨーロッパ選手権やワールドカップのときなどにはつねに極端なナショナリズム、人種差別、ヘイトなどに対する反対キャンペーンがおこなわれています。マスメディアもそういうネガティヴな行動に神経を尖らせています。

 

 

そんな中でトルコがオーストリアに勝った試合の直後に起こったことが大きなスキャンダルになりました。たびたび好プレーでオーストリアのゴールを阻んだトルコのキーパー・デミラールが喜びのあまり試合終了時に両手を挙げて指で「狼の挨拶」をしたのです。これは別名「灰色の狼」とも呼ばれるもので、日本ではちょうど影絵遊びで狐を作るときの指の形と同じです。

日本では、なんでこんなものがスキャンダルになるのか不思議でしょうが、これはトルコの極右運動の象徴なのです。ドイツだったらネオナチですね。

 

だから、デミラールがこれをやったとき、ドイツのマスメディアは直ちに反応しました。トルコの右派政権は、これがなぜ悪いのかと逆抗議を入れましたが、ヨーロッパ・サッカー連盟はデミラールの行為を良しとせず、罰則として以後2試合の出場禁止を下しました。その次の試合でヨーロッパを敵に回したトルコが典型的なハイブリッド・チーム、オランダに負けたのも「懲罰」だったかもしれません。

 

こういう話、日本でも全く無関係というわけでもありませんね。ソーシャルメディアで嫌韓や反日のヘイトが飛び交い、それがサッカーにも及んでいるからです。

 

サッカーを愛する僕はこういう下劣な言説でサッカーというゲーム自体が汚されるのを恐れます。プレーそのものに人種もへったくれもありません。蹴られたボールは黒くなったり、黄色くなったりしません。近頃の「悪意の氾濫」にはホントにウンザリ。

 

 

 

 

教授、本日も有難うございました!

ヨーロッパの右傾化をサッカー界が歯止めの一役を買っている

勉強になりました。

世界的なこの右傾化の傾向は元はどこにあるのでしょうか、いやな時代です

 

しかし私がもう一つショックだったのはロナウド以外サッカー選手の名前を誰も知らなかった事です。。。

 

教授、本日も有難うございました