こんばんわ!モンです
ドイツの小林教授からレポが届きました
ヨーロッパの夏と言えばヴァカンスですね
今回のレポートは小林教授夏の旅行記
さあ教授はどちらに旅に出たのでしょう~
教授!本日もよろしくお願いいたします
久しぶりの旅行記です。今回はちょっと長めになります。この夏周りの人間がみな旅行に出てしまって、Patenonkelもできなくなった私は困ってしまいました。そこで、旅には旅をという偽ハムラビ法典の教えを参考に、自分でも旅をして「復讐」をすることにしました。
いろいろ思案した挙句、ドイツに来たときから行ってみたいと思いながら30年間果していない場所、アルゴイに行くことにしました。これはドイツの最南部にあってオーストリアに接する地方で、これからアルプスが始まるよ、というところです。
なぜここに親しみを感じるかというと、ロケーションが日本の自分の実家に似ているからです。私の故郷は木曽川をずっと遡って、これから飛騨山脈と木曽山脈が始まるよ、というその手前の中津川というところなのですが、背後には2000m級の山がそびえ、少し奥に入れば3000mを超える活火山御岳山もあります。開けているのは南方の木曽川沿いの一角だけです。こういう場所で育った人間には、ドイツのようなスース―した平地は背中に防壁がないので、何とも心許ないのです。
中央ドイツにはブロッケン山を擁するハルツ山地というのがあるのですが、私から見れば、こんなものは山ではなく、丘にすぎません。山というかぎりは目の前に屹立するようなものでなければ、山とは言えません。「横臥」ではなく、あくまで「屹立」です。日本人だったらこんなことは当たり前なのですが、ライプツィヒやベルリンではそれが通じません。
今から30年ほど前東京からベルリンに移ったばかりのころ、ここは山がないから寂しいと言ったら、ベルリンにもクロイツベルクとか、いろいろ山があるというので行ってみると、何と高さ20mか30mの丘じゃありませんか。おまけにその芝生の斜面には真っ裸の男女が日向ぼっこをしているのです。馬鹿にするんじゃない!と啖呵を切りたいところでしたが、好奇心もあって、ぐっとこらえました。これも異文化体験だと。
ライプツィヒはもっとすごいです。数十メートルを超える高さの丘があるのですが、これらはみな褐炭などの採掘で出た土を積み上げたもので、日本だったら「山」ではなく「ボタ山」ですね。つまりマガイモノの山しかないのです。こんな「山無し」地方に30年も住んでいると、ときには本物の山を見たくなります。私が山水画に安らぎを覚えるのも、きっとその埋め合わせでしょう。
ということで、先日本物の山を見に、アルゴイのオーバーストドルフというところに行ってきました。ライプツィヒ・ミュンヘン間の運賃は一応払いましたが、そのさき2時間半の列車はタダ同然。というのもドイツ政府はこの夏6,7,8月の3カ月に限って、1カ月9ユーロ乗り放題の特別切符を売りに出したのです。これを買うと、ICE、ICの(超)特急を除く地方列車や市電、市バスなどがすべてタダになるという切符なのです。むろんドイツ国内に限っての話ですが。
速い話、ライプツィヒからベルリンまで、超特急のICEで1時間ちょっとで行けるのですが、これを我慢して、2時間半ほどかけて各駅停車の列車や快速の地方列車などを乗り継いで行けば、運賃タダということです。
当然だれもがこのボーナス切符に飛びつきました。そのため普段だったらガラガラの地方列車が休暇や週末になると満杯になるという事態が起きました。とくに夏のヴァカンスで人気のバルト海に向かう列車などは大人気。そこで私は逆の南方を狙いました。この目論見は当たりました。ただし往路だけは。
オーバーストドルフといえば、何といってもドイツにはめったにない2000mを超える高峰ネーベルホルン(霧の角)です。この山のありがたいところは、麓からケーブルカーがつながっていて、これを2,3回乗り継いでいくと、そのまま頂上まで行けることです。天候にも恵まれ、山頂からの眺望は期待通り最高でした。
ところが、ウキウキ気分でつい調子に乗ってしまったのがいけませんでした。帰りのケーブルの切符も買っていたのですが、つい山男だった若いころを思い出して、歩いて下りてみようなどと思ったのが大間違い。ケーブルから見下ろすのとは大違いで、道は20度から30度はあろうかという急坂の連続で、休み休み3時間ほどかけて下りてきたときには足はガクガク、ほとんど限界でした。おまけに足の爪3本ほどが内出血、翌日はただホテルに転がっているよりありませんでした。それでも長年の夢を実現したので、足の爪3本ぐらいの犠牲だったら、まあ安かったのかも。
もう一つこの町で面白いことがありました。ホテルに着いたときも、近くのレストランに予約したときも、みなあっさり「Kobayashi」という名前をメモするのです。普通ドイツではどこでも「コバヤシ」といっても、一発で正しく書ける人はいません。たいていは1度か2度綴りを一文字ずつ言い直さなければならないのです。ところがこの町ではその必要なし。どうしてだと思います?
オーバーストドルフと聞いて、ピンときませんか。そうです。ここは国際的にも有名なスキーのジャンプ場があるところで、この町の人たちならだれでもジャンプのスーパースター小林陸侑君を知っているのです。ホテルで支払いを済ませようとすると、ひょっとしてあのコバヤシと親戚かと訊かれた私は飄然と、ええ、千年ぐらい前にはそうだったかも、とうそぶいておきましたよ。
ということで気分よくライプツィヒに帰ったと言いたいところですが、なかなかそうはいかないのがドイツ鉄道です。ミュンヘンまでの運賃タダの区間は順調だったのですが、金を払ったミュンヘンからのICEがとんでもなかった。
まず指定席があるはずの4号車にはこちらのもっている番号に当たる座席はありません。ウロウロしていると、誰かが、急に車両が変更になったらしい、自分の座席もない、と叫びます。列車が定刻通り発車しても中は大混乱、やけくそになった乗客たちは指定表示を無視して座り始めます。車掌はほかの車両でつかまっていて、こちらまで回ってくる余裕はありません。
私は番号はちがうけれどミュンヘンからライプツィヒまでの指定表示が出ている席を見つけ、そこに座っている外国の若い学生に、悪いけど、多分これは私の座席だと言うと、幸い彼はあっさり席を譲ってくれました。
これでホッとしたと思いきや、座っていると車両は西日を受けて蒸し暑くてたまらない。そのうちクーラーがかかるのだろうと待っていても一向に涼しくならないどころか、まるでサウナです。堪らなくなった私が車両を出て、次の車両とのつなぎのところに座り込んでいると、そこへやっと車掌が通りかかり、申し訳ないけれど、この車両はクーラーが故障しているので、全員他の車両に移ってくださいと言います。
プッツン(擬態音)。ここで「温厚」な私もついに堪忍袋の緒が切れてしまいました。勝手に車両を変えられ、指定席も無効になったうえに、やっと席を見つけた車両からも出ていけでは、あまりにひどい話じゃないかといきりまくり、こういう場合はこの車両の乗客をすべてファースト・クラスの空いている席に座らせるべきだと抗議しておいて、さっさと自分だけファースト・クラスの車両に移り、そこの空いている席を見つけて陣取ってしまいました。その後3時間ほどの間検札の(別の)車掌がやってきましたが、私は一切無視して座り込んだまま、車掌の方も切符を改めるのをあきらめ、ついにライプツィヒまで帰ってきてしまいました。この話のオチ、なんだと思います?
これだったら帰りの運賃も払わなくてよかったのに。
コメントをお書きください
風間広子 (金曜日, 02 9月 2022 20:15)
小林教授
またまた楽しく、旅行記を拝見しました。旅には旅を!というすばらしい教えがあるのですね。笑
2回、小林教授のレポートを読んだのですが、あら?指定席でお帰りになられたのですよね。
足の爪はもう大丈夫ですか?
モンさま
モンさんが山に夏行かれたのは、もう2年前になるのですね。時の流れは早いです(╹◡╹)
小林 (金曜日, 02 9月 2022 20:50)
夏の休暇期間にはドイツ人はよく旅行をするので、長い距離を旅行するときは指定席を取っておいた方が安全です。このときも案の定2等車は始発からほぼ満杯でした。だからああいう混乱も生じたわけです。
生爪の方は3本が生え変わるのを「楽しみに」待っているところです。
風間広子 (金曜日, 02 9月 2022 23:34)
小林教授
ドイツ人の旅行事情を教えてくださり、ありがとうございます。
爪、、、生え変わるとき痛くはないのでしょうか、、、