小林敏明教授の「ライプツィヒの街から 60 コロナ名画座-小津安二郎」

こんばんわ!モンです

 

まだまだ暑い2020夏

ドイツの小林教授からレポートが届きましたよ

なんと今回で60回!

教授オイルライフに60回もレポートを届けてくれて

有難うございます。

 

教授には感謝を込めて一献お願します。

といきたいところですが・・・この状況ムムム

教授、次回帰国の際には是非お願いします。

 

60回目のテーマは名画

それでは、教授本日も宜しくお願い致します。

 

 

 

コロナ名画座 - 小津安二郎

 このところズル休みで福澤さんに代打ち(注)ばかり頼んでいたので、せめて区切りの60回目ぐらいは自前の文章をと。(注:代打ちとは、麻雀している最中にちょっと抜けてラーメンを食べに出かける間、そばにいる手空きの誰かに自分の名目で代わりに打ってもらうことなどを言います。えっ、「アサスズメ」って何ですか、ですって。知ラン。)

 前回、コロナ籠りをするようになってから毎日古い日本映画を観ていると書きましたが、今回はそのコロナ名画座の続き。

 この一カ月ほどひたすら観まくったのが、小津安二郎です。立て続けに20本ほど観ましたか(YouTubeも探せば、けっこうあるものですね)。小津についてはプロの映画評論家をはじめたくさんの人が書いているので、僕のようなトーシロが口を出すのはとてもおこがましいのですが、それでも何か一言いってみたくなるのが、この人の魅力ですね。(「トーシロ」って何ですか、ですって?「素人」のことですよ「しろうと」、「そじん」じゃありません。)

まず尊敬すべきは、ほとんど派手なストーリーもなく、淡々と家族の日常を描き続ける不動の精神です。セリフもかなり控えめで、スクリーンにはつねに静謐な雰囲気が漂います。娘の縁談に密かに気をつかう父親とか、自立してそれぞれに一家を構えている子供たちと合わなくなっている老夫婦の悲哀というような、ある意味で「ありふれた」な話が延々と語られるわけですね。

 役者もほぼ固定メンバーで、老け役の常連俳優笠智衆(あの『寅さん』の御前様です)の語り口などを耳にしていると、いつの間にか眠ってしまいそうなのですが、じつは何本か観ていると、これがだんだん心地よくなります(これって熊本弁なんですね)。あの棒読みの朴訥な口調が原節子をはじめとする美しい女優たちの気品あるセリフとマッチして、なんとも言えない空気を醸し出します。そこに飯田蝶子、杉村春子、三宅邦子などの芸達者が絡むと、一見淡々としたシーンに厚みが加わって、ワンカットワンカットが、それだけで楽しめるのです。とくに杉村春子はすごい。どんな役、そんなセリフやそぶりも完璧に演じてます。

 それにしても小津映画の女優たちはみなキレイです。伝説の原節子をはじめ、田中絹代、高峰秀子、岸恵子、淡島千景、香川京子、若尾文子、有馬稲子、岡田茉莉子、岩下志麻等々等々と、ソーソーたる顔ぶれです。まだだれか忘れてますね。そうそう溝口健二映画の看板女優京マチ子も出てました。とにかく小津の手にかかると、この女優たちがことごとく光り輝きます。まさに小津マジックというべきか。

 つぎに小津映画の特徴について。一言でいうと、小津映画の最大の特徴は「反復」です。内容的に日常の光景が淡々と反復されるだけでなく、小津組と呼ばれる常連の俳優たちが同じような役どころをくりかえし演じ、ひとつの型を作り上げています。具体的な例をあげましょう。

 『彼岸花』のテーマは娘を嫁がせる父親ですが、同じような父娘の関係は『晩春』もそうです。さらに言うと、『彼岸花』では父親の友人グループを中村伸夫らが演じているのですが、この友人仲間はほぼそのままの形で『秋日和』で反復されています。

 文字通りの反復は戦前の1934年に作られた『浮草物語』が戦後1959年にリメイクされて『浮草』として作られていることです。それを知らずに観ていた僕のようなトーシロは、どこかで聞いたような話だったが、さて?などと考えちゃいましたよ。

 最近はやたら「新しいもの」「珍しいもの」「個性的なもの」が求められていますが、皮肉なことに小津のありふれた日常の反復を淡々と描いた作品の方がよほど「個性的」に見えるから不思議です。そもそも「新しいもの」はそんなに良いものなのか。小津の映画を観ていると、ふとそんな疑問が湧いてきます。まあ、ロージンの僻みもあるでしょうが。

 絵の好きな僕には、画面の作り方もじつに面白い。基調となるのは幾何学図形です。非常に目立つのは遠近透視図法を意識した画面作りです。そのために廊下や小路がよく使われます。人を並べて撮るときにもこの技法が使われ、一人を少し後ろに、もう一人をやや前に出して斜めの構図を作ります。

 平行図もよく使われています。二人の人間を向かい合わせにして、それを真横から撮るような構図です。ちゃぶ台を挟んだ対面シーンなどですね。背景としては障子、ふすま、ガラス戸がその構図を補強している感じです。この関連で面白いのは、カメラが低く畳の近くの高さに設置されているので、座った人物の足がたびたび映し出されます。映画評論家の蓮實重彦は、小津映画のことを足の裏がよく見える映画だと評していますが、まさに言い得て妙。

足がよく見えるということに関連していえば、畳の上での食事の場面がやたら多いのですが、飲み屋や小料理屋で酒を飲むシーンも目立ちます。これは小津自身の生活ぶりを反映したものでしょう。またタバコを吸うシーンもじつに多い。最近の禁煙社会では考えられませんが、小津映画に限らず、1970年代までの映画作品においてタバコを吸うシーンはやたらと多いですね。今だったら周りから総スカンを食らうところでしょう。あんた、何粋がってるの、子供もいるんですからね、やめてください!なんてね。これじゃ、カッコウがつきません。

 着替えのシーンも目立ちます。そのほとんどは仕事から帰った父親(家長)が洋服から着物に着替えるシーンですが、仕事の世界=洋服(西洋)、家庭=和服(日本)という区別を衣類で象徴させているのでしょうね。いかにも小津らしい様式美です。

 最後に僕の個人的な好みを。まず戦前では貧困や失業といった深刻な社会的テーマをヒューマンに描いた『生れてはみたけれど』と『出来ごころ』、戦後ならやはり世界的に評価の高い『東京物語』ですが、もうひとつ個人的な好みを付け足しておけば、一人の男(池部良)をめぐって淡島千景と岸恵子が競合する『早春』などもイイですね。岸恵子がホントにチャーミングです。近頃の不可解な日本語で言えば、「超美しい」とか「美しすぎる」ということになるんでしょうか。それにしても何、この「超」と「すぎる」?それこそ「ワケワカンナーイ」ですね。そんなこと言うのもローカ現象ですって? まあ、そうかも。

 

 

教授!

本日も有難うございました!

 

私、映画は好きな方なのですが、小津安二郎はほぼ観ていませんでした・・・

(東京物語、あとたしか秋刀魚の味だったか・・・)

小津安二郎と聞いてヴィム・ヴェンダースとホウ・シャオシェンを最初に思い出しました

 

映画はその時代を写す鏡

特に昔の日本映画を観ると60年以上前に撮られた作品なのに妙に郷愁にかられます

自分は経験した事が無いのに懐かしい気分になります。

これは昭和生まれの共通認識なのでしょうか?

 

古い日本映画と聞いて久々に所有している

勅使河原宏のボックスセットを観直してみようかしら・・・

 

教授、笠智衆つながりで

山田洋次監督の「家族」もおススメです

(こちらは倍賞千恵子が超美しすぎます(笑)是非!

 

モチロン明日も営業中

小津安二郎

 

 

 

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コメント: 5
  • #1

    風間広子 (月曜日, 31 8月 2020 20:57)

    モンさま
    こんばんは。小林教授さまのレポートを興味深く読ませていただきました。私も映画がすきでして、小津安二郎さんの作品はいくつか観ました。原節子さん主演だったと思います。今の東久留米に引っ越してくる前ですので、もう20年以上前です。

    山田洋次さん監督の家族は見逃しました。息子は感動しました。下町の太陽もおススメです。倍賞千恵子さんがとても綺麗です。
    それこそ私は3歳から23歳まで、葛飾柴又に住んでいました。男はつらいよもすきです。初期の作品に、古い私の家が映っています!←自慢。

    あと日本映画は、植木等さんシリーズもすきですね。

    楽しいレポートをどうもありがとうございました�
    またまた長文失礼いたしました。

  • #2

    オイルライフです (火曜日, 01 9月 2020 20:08)

    風間さま

    生まれも育ちも葛飾柴又ですか!
    帝釈天で産湯をつかった訳ですね

    男はつらいよに実家が映っているとは
    それはスゴイ自慢ですね

  • #3

    風間広子 (水曜日, 02 9月 2020 00:39)

    モンさま
    いえ、産湯は山梨県甲府市でした。3歳まで山梨県に住んでいました。

    父方の祖母が、浅草育ちでした。去年、104歳で亡くなりました。戦時中に東京大空襲で浅草の家が焼けてしまい、柴又に越してきたそうです。
    浅草のほうが、カッコいいです!

  • #4

    成瀬政子 (木曜日, 03 9月 2020 21:11)

    小林教授とは古くからの友人です。もんさんのブログを楽しみにしています。もんさんは教授の教え子ですか?

  • #5

    オイルライフ モンです (土曜日, 05 9月 2020 19:01)

    成瀬様

    コメントありがとうございます。
    ブログ頑張ります。汗・・・
    小林教授とはひょんな事から知り合いまして
    大変お世話になっております。

    是非またブログのぞきに来て下さいませ。
    ありがとうございます。