小林敏明教授の「ライプツィヒの街から 33 緊急レポート:困った Pegida ペギーダ 」

こんばんわ!モンです


先日のフランスの週刊誌「シャルリー・エブド」編集部襲撃事件の後ヨーロッパ各地でも混乱が広がっているようです。


ドイツの小林教授から現地緊急レポートが届きました。

12日にドイツ各地で行われたデモの様子です。


ちょっと長いレポートですが最後まで飛ばさずに読んで下さい、なかなか考えさせられる問題です。


それでは教授、本日もよろしくお願いいたします!



皆さんはPegida(ペギーダ)という言葉をご存知でしょうか。これは「西欧のイスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人」という名称の略称で、去年の秋にドレスデンで結成された反イスラムの運動です。


この自称市民団体は実際にはネオナチやフーリガンに煽動されてできたものですが、これに少なからぬ一般市民が加わって、毎週月曜日にデモを繰り広げています。

 

これがだんだんと社会問題化し始めたところで、先週イスラム原理主義者たちによるパリの襲撃事件が起きてしまいました。じつに悪いタイミングでした。ドイツのPegidaが勢いづいたのは言うまでもなりません。そーれ、見てみたことか、というわけです。

事件明けの今週月曜日には総動員がかかり、ドレスデンに25000人が集まりました。かなりの数です。


これに呼応してライプツィヒでもLegidaというグループが動員をかけました。この日は全国各地でPegidaのデモがあったのですが、他はどこも百人から数百人にとどまり、ネオナチ・グループが総動員をかけたドレスデンとライプツィヒを抱えるザクセン州に衆目が集まりました。


この事態はすでに先週から予想され、各地でこれに対抗するデモが組まれました。


わがライプツィヒも、市長をはじめ、各種の団体が反Legidaの対抗デモを呼びかけ、大学も大学名で対抗行動を呼びかけるなどしました。


ライプツィヒではLegidaの4800人に対して対抗デモは30000人にのぼりました。他の都市ではミュンヘンで20000人、ハノーファーで19000人が対抗デモに出ています。

問題は、このところ急激に高まっている反イスラムを中心とした反移民、ひいては外国人排斥の動きです。


僕もこの地では「外国人」ですから、他人事というわけにはいきません。対抗デモに参加したかったのですが、いかんせん、前日からドジなことに、ぎっくり腰に悩まされ、自宅待機、ちょっと悔しい思いでした。

 


どうして、こういう事態が起こっているのか。僕なりに考えてみると、直接的にはイスラム原理主義のテロに対する不安というのもありますが、根はもっと深いところにあるようです。ドイツはかつてトルコから大量の外国人労働者を入れて、その人たちが住み着いて二世三世の時代を迎えているのですが、この人たちとの交流がいまひとつうまくいっていないことが原因のひとつです。

そこにアメリカのブッシュによって開始された中東戦争の結果、膨大な難民が発生し、ヨーロッパはこれの受け皿となりました。しかし、これが何年も続き、いまヨーロッパはどこの国でも難民の受け入れに躊躇し始めています。

 

こういう状況の中で反移民・反難民さらには反外国人の雰囲気が広がってきて、外国人による犯罪が表ざたになるたびに、その雰囲気が高まっていく感じです。ドレスデンでネオナチが増えたのは、ここはチェコとの国境で、東欧からの通路になっており、この地域では外国の窃盗団などが暗躍しているということが一般市民を不安にしていると言われます。

 

しかし、間接的な理由ですが、もっとも大きな問題は、格差社会の顕在化と失業率の高さです。経済的にゆとりがあれば、人は他人にも友好的になれますが、そうでないと、その不満が政府のみならず、近くの対象に向けて発散されます。外国人が過剰に入ってくるから自分たちの仕事が奪われているとか、難民や移民が入ってきたから犯罪が増え、社会も文化もおかしくなったという考えが出てくるわけですね。

 

その意味でドレスデンというのは象徴的な町ということができます。国境の町というだけでなく、旧東ドイツ地区は相変わらず失業率が高く、給料格差もなかなか解消されません。その一方で、かつてのザクセン公国の首都として文化的伝統への愛着や誇りもあります。ツヴィンガー宮殿と美術館、ゼンパー・オペラ座、フラウエン教会、エルベ川遊覧などの観光スポットは、いまやドレスデンの産業の中心をなしています。ここでは日本人観光客も良く見かけます。

 

さらに、もうひとつの原因をくわえると、東西の壁が破れて20年以上経つのですが、さきにも述べたように、東西の格差がなかなか解消されず、かつての社会主義の時代の方が良かったと感じる人たちが少なくないということがあります。だから、今回のデモのように、ネオナチとフーリガンに混じって親ロシア派の旧左翼が行動を共にするという「ねじれ」も生じたりしているわけです。

 

いずれにせよ、このPegidaの運動、非常に根の深い問題で、今後のドイツにとって大きな課題となることでしょうが、これはおそらくドイツだけの問題ではなく、EU全体、ひいては先進資本主義国がこれから直面していかなければならない問題だと思います。おそらくこの点ではEU諸国に比べて移民も難民もはるかに少ない日本とて例外ではないでしょう。

 

繰り返しますが、僕の見るところ、一番の問題は、豊かな人間が豊かになり、貧しい人間がいっそう貧しくなっていく現在の経済体制とそれを進めてきたネオリベラル(新自由主義)の政治政策にあると思います。日本では、小泉政権に始まって現在の安倍政権にまでつながっている政策の危険性がそこにあります。グローバル化の時代と言っても、金持ちや大企業のためだけのものであったら、何にもなりません。

 



 

教授 本日もありがとうございました!

タイムリーに本日の朝日新聞の一面トップでこのデモが取り上げられておりました。

(写真は朝日新聞紙面より)


外国人排斥問題、日本でも一部団体によるヘイトスピーチなど正に教授が言うように他人事ではありませんね。


「シャルリー・エブド」襲撃事件に戻れば今週末より江古田にあります「ギャラリー古藤」さんにて<表現の不自由展>開催されます。

表現の自由、差別、外国人排斥、格差社会、大変難しい問題ではありますが、ちらりと心に

留めてちょっと考えてみるのはいかがでしょうか?


<表現の不自由展>詳しくは「ギャラリー古藤」さんのサイト

コチラ から